日本全国で増加を続け、社会問題にもなりつつある「空き家」。相続したものの放置してしまっている、活用方法に悩んでいるという方も多いのではないでしょうか。
しかし、空き家は適切にリノベーションすれば、魅力的な住まいや収益物件として生まれ変わらせることができます。
本記事では、空き家リノベーションにかかる費用の相場から、活用できる補助金制度、さらにはメリット・デメリットまで、空き家活用を検討している方が知っておくべき情報をお届けします。空き家を価値ある資産へと生まれ変わらせるために、ぜひ最後までお読みください。

空き家のリノベーション費用は、工事の規模や内容によって大きく異なります。一般的に、部分的なリフォームであれば数十万円から・フルリノベーションとなると数百万円から1000万円以上かかるケースもあるでしょう。
国土交通省の資料によると、水回り設備の交換で約50万円から150万円、間取り変更を含む大規模リノベーションでは500万円から1500万円程度が相場とされています。具体的な費用の内訳を見ていくと、以下のような相場となっています。
空き家特有の課題として、老朽化が進んでいる場合は基礎補強や耐震補強が必要となることがあり、これらの工事には別途100万円から300万円程度かかることもあります。長期間放置されていた空き家では、シロアリ被害や雨漏りなどの修繕も必要になる可能性があるため、事前に専門家による住宅診断を受けることをお勧めします。
リノベーション費用には工事費以外にも、設計費(工事費の5%から15%程度)、確認申請手数料、ローンを利用する場合の諸費用(借入額の2%から3%程度)なども発生します。総予算を立てる際には、これらの諸費用も含めて計画することが大切です。

空き家リノベーションには、国や自治体から様々な補助金制度が用意されています。2025年現在、最も活用されているのが「住宅省エネ2025キャンペーン」です。この制度は、省エネ性能を高めるリフォームやリノベーションに対して補助金が交付されるもので、高断熱窓への改修では最大200万円、高効率給湯器の導入では最大18万円の補助が受けられます。
国土交通省が実施する「長期優良住宅化リフォーム推進事業」も見逃せません。住宅の耐震性や省エネ性能を向上させる工事に対し、最大160万円の補助が受けられる制度です。
また、「住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業」では、高齢者や障がい者、子育て世帯などへの賃貸を目的とした空き家改修に対して、最大200万円の補助が受けられます。
自治体独自の補助金制度も充実しており、空き家対策や移住促進を目的としたものが多く見られます。例えば、北海道鷹栖町では工事費用の2分の1以内で最大30万円、千葉県市原市では空き家バンク登録物件購入後のリフォームに最大100万円、長野県飯山市では移住者の住宅改修に最大20万円の補助を設けているのです。
補助金を活用する際の注意点として、多くの制度では工事着工前の申請が必須となっています。予算に達し次第受付が終了する場合が多いため、早めの情報収集と申請が必須です。
なお空き家を民泊として運用することを検討している方は、民泊に特化した補助金制度もあります。詳しくは以下のページをご覧ください。
▶関連記事:空き家を民泊にする際に活用できる補助金制度とは?採択されやすくなるポイントを徹底解説

空き家のリノベーションでは、補助金以外にも減税制度やローンなど、費用負担を軽減できる様々な制度があります。組み合わせれば、より効果的にコストを抑えながら理想のリノベーションを実現できるのです。
ここでは、空き家リノベーションをするうえで知っておくべき重要な制度について詳しく解説します。
※各制度は時期や年度により改正・変動することがあります。最新情報を必ずご確認ください。
空き家リノベーションには、所得税や固定資産税の減税制度が用意されており、10年以上の住宅ローンを利用してリノベーションを行った場合、住宅ローン減税により年末のローン残高の0.7%が最大10年間、所得税から控除されます。この制度は2025年12月31日入居分まで適用され、リノベーション後に自己居住する場合が対象です。
住宅ローンを利用しない場合でも、リフォーム促進税制により所得税の控除を受けられます。主な控除内容は以下の通りです。
固定資産税については、省エネ改修や耐震改修を行った場合に減額措置が適用されます。省エネ改修では工事完了年の翌年度分の固定資産税が3分の1減額され、耐震改修では2分の1が減額されます。減税制度を受けるためには、工事完了後に確定申告や自治体への申告が必要となるため、リノベーション業者に事前に相談し、必要な証明書類を準備するようにしましょう。
空き家リノベーションの資金調達方法として、リフォームローンと住宅ローンの2種類があります。それぞれの特徴を比較すると以下のようになります。
リフォームローンの特徴
住宅ローンの特徴
近年注目されているのが、築年数が古い物件や再建築不可物件でも利用できる「空き家ローン」です。従来の住宅ローンでは担保評価が低く融資を受けられなかった物件でも、個人の信用情報に基づいて審査される無担保型のため、借入が可能になるケースがあります。
例えば、空き家活用株式会社が提供する「アキカツローン」など、空き家に特化したローン商品も登場しており、借入額は最大2000万円、金利は年2.5%から程度で利用できます。ローン選択の際は、自身の返済能力や工事規模、物件の状態を考慮し、金融機関や専門家に相談しながら最適な商品を選びたいところです。

空き家のリノベーションには、単に建物を綺麗にするだけでなく、資産価値の向上や様々なリスク回避など、多くのメリットがあります。デメリットもありますが、メリットを最大化する方向性で考えていく必要があるのです。
ここでは、空き家をリノベーションする主要な3つのメリットについて詳しく解説します。
空き家を適切にリノベーションすることで、建物の資産価値を大幅に向上させることができます。老朽化した空き家は市場価値がほとんどないケースも多いですが、現代的な設備や間取りに改修することで、賃貸物件や売却物件として十分な競争力を持つようになるのです。
国土交通省のデータによると、適切にリノベーションされた中古住宅は、未改修の物件と比較して20%から40%程度高い価格で取引されるケースが多く見られます。省エネ性能や耐震性能を向上させることで、長期優良住宅の認定を受けられる場合もあり、更なる資産価値の向上が期待できます。
賃貸物件として活用する場合、リノベーション済み物件は入居者からの人気が高く、周辺相場よりも高い家賃設定が可能になることが多いです。特に若年層からは、古い設備の物件よりも、新しい設備と魅力的な内装を備えた物件が好まれる傾向にあります。
空き家を放置することには、様々なリスクが伴います。2015年に施行された空家等対策特別措置法により、管理不全の空き家は「特定空家」や「管理不全空家」に指定される可能性があり、指定されると固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなり、税額が最大6倍に跳ね上がるリスクがあります。
リノベーションを実施することで、こうした法的リスクの回避につながるのです。建物を適切に管理し、活用可能な状態に保つことで、特定空家等への指定を防ぐことができるのです。
放置された空き家は不法侵入や放火、不法投棄の温床になりやすく、地域の治安悪化にもつながります。リノベーションして活用することで、これらの防犯上のリスクも解消できるなど、経済的な側面だけでなく社会的責任を果たすという観点からも、空き家のリノベーションには大きな意義があるのです。
空き家のリノベーションを行い、実際に活用することで、行政から空き家として認定されにくくなります。空家等対策特別措置法における「空家等」の定義は「居住その他の使用がなされていないことが常態である建築物」とされており、適切にリノベーションして自己居住や賃貸、事業用として使用していれば、この定義に該当しません。つまり、空き家として問題視される状態から脱却できるのです。
自治体による空き家の実態調査では、建物の外観や管理状態が大きな判断材料となります。リノベーションによって外壁や屋根が綺麗に修繕され、定期的に人の出入りがある状態を保つことで、調査対象から外れる可能性が高まります。特に、賃貸物件として運用している場合は、入居者がいる限り空き家とは見なされません。
リノベーション後に地域交流の場やコミュニティスペースとして活用するケースでは、地域貢献にもつながり、自治体からの評価も高まります。空き家バンクに登録して、積極的に活用を図る姿勢を示すことも行政からの厳しい指導を避ける上で有効ですので、ぜひ検討してみてください。

空き家のリノベーションには多くのメリットがある一方で、デメリットや課題も存在します。これらを事前に理解し対策を講じることが、後悔のないリノベーションを実現するための鍵となるでしょう。
そこで、空き家をリノベーションする際に発生しがちなデメリットについていくつか解説していきます。
空き家リノベーションの最大のデメリットは、やはり費用面です。特に長期間放置されていた空き家の場合、表面的な修繕だけでなく、構造部分の補強や配管の全面的な交換など、予想以上の工事が必要になるケースが少なくありません。当初の見積もりでは500万円程度と考えていたものが、実際に工事を始めると隠れた劣化が見つかり、最終的に2倍以上の金額に膨らむといった事例も珍しくないようです。
特に築年数が古い物件では、現在の建築基準法に適合していない場合があり、大規模なリノベーションを行う際には建築確認申請が必要になることがあります。2025年4月の建築基準法改正により、木造戸建ての大規模リフォームが建築確認手続きの対象となるケースが増えており、これに伴う追加費用や工期の延長も考慮する必要があります。
費用を抑えるための対策としては、まず信頼できる業者に依頼して詳細な住宅診断(インスペクション)を実施することが大切です。必要な工事の全体像を事前に把握することで、予算計画を立てやすくなります。
そのほか、前述したような補助金や減税制度を最大限活用することで、実質的な負担を軽減できます。工事の優先順位を明確にし、予算に応じて段階的にリノベーションを進めるという選択肢も検討する価値があるでしょう。
空き家のリノベーションでは、建築士、施工業者、設備業者、場合によっては不動産業者や金融機関など、複数の専門家とやり取りする必要があります。それぞれの業者の選定には時間と労力がかかり、特にリノベーション初心者にとっては、どの業者が信頼できるのか判断するのが難しいという課題があります。
各業者から見積もりを取る際にも、見積書の内容を正確に理解し、適正価格かどうかを判断するのは容易ではありません。同じ工事内容でも業者によって金額が大きく異なることもあり、単純に安い業者を選ぶと、後で品質面での問題が発生するリスクもあります。
この課題を解決するためには、まず地域で実績のある業者や、空き家リノベーションの経験が豊富な業者を選ぶことを念頭に置いておくべきです。口コミサイトや実際の施工事例を確認し、可能であれば過去の顧客に話を聞くことも有効です。
近年では、リノベーション会社の中に、設計から施工、補助金申請まで一括でサポートしてくれるワンストップサービスを提供する業者も増えています。こうした業者を利用することで、複数の業者との調整の手間を大幅に削減できるでしょう。

空き家のリノベーションにかかる期間は、工事の規模や内容によって大きく異なり、部分的なリフォームであれば1か月から2か月程度、フルリノベーションとなると3か月から6か月程度が目安です。ただし、これはあくまで工事期間であり、実際には計画段階から完成まで、より長い時間が必要となります。
具体的なスケジュールを見ていくと、まず計画・設計段階で1か月から2か月程度が目安です。住宅診断(インスペクション)の実施、設計プランの作成、見積もりの比較検討などが主な内容です。補助金を活用する場合は工事着工前に申請が必要なケースが多いため、申請書類の準備と審査期間も含めて余裕を持ったスケジュールを組む必要があります。
住宅ローンを利用する場合は、審査にも時間がかかり、リフォームローンであれば1日から5日程度と比較的短期間ですが、住宅ローンの場合は2週間から1か月、場合によっては1.5か月程度かかることもあります。これらの準備期間を考慮すると、工事着工までに2か月から3か月程度は見込んでおく必要があるでしょう。
工事期間については、水回りのみの改修であれば1か月程度、内装の全面改修を含む場合は2か月から3か月程度が一般的です。間取り変更や構造補強を伴うフルリノベーションでは、4か月から6か月程度かかることもあります。老朽化が進んだ空き家では、工事を始めてから予期せぬ劣化が見つかって追加工事が必要になることもあるため、スケジュールには余裕を持たせるようにしましょう。
また、建築確認申請が必要な大規模リノベーションの場合は、申請から確認済証の交付まで2週間から1か月程度、工事完了後の完了検査にも1週間から2週間程度かかります。これらを含めると、計画開始から入居可能になるまで、少なくとも半年から1年程度は見ておくのが現実的です。

ここまで触れてきたように、空き家をリノベーションする目的は、所有者の状況や物件の立地によって様々です。目的によっても、リノベーションの際に発生する金額が大きく違ってくることもあるため、どういった方向性にするかを定めておくことも欠かせない要素となっています。
ここでは、代表的な2つの目的について詳しく解説します。
最も基本的な目的は、放置された空き家を活用可能な状態にし、空き家問題を解消することです。相続した実家が空き家になっていても、「遠方に住んでいて管理が難しい」「解体費用が高額で負担できない」といった理由で、やむを得ず放置しているケースは少なくありません。しかし、空き家を放置し続けると、固定資産税の負担増加や行政からの指導、近隣トラブルなど、様々なリスクが発生するのは避けられません。
リノベーションによって空き家を蘇らせることで、こうしたリスクを回避しつつ資産として有効活用できるようになります。自己居住用としてリノベーションすれば、新築住宅を購入するよりも大幅にコストを抑えながら理想の住まいを手に入れられるのです。
賃貸物件としてリノベーションする選択肢もあります。立地条件が良ければ、魅力的な賃貸住宅として高い入居率を維持できる可能性があります。単身者向け、ファミリー向け、高齢者向けなど、地域のニーズに合わせたリノベーションを行うことで、安定した賃料収入を得ることができるでしょう。
近年、空き家を民泊として活用するケースが増えています。特に観光地や都市部では、民泊需要が高く、適切に運営すれば高い収益性が期待できます。古民家の趣を活かした民泊は、特に外国人観光客からの人気が高く、日本の伝統的な住宅体験を提供することで、周辺のホテルよりも高い宿泊料金を設定できる場合もあるでしょう。
民泊運営には、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく届出、または旅館業法に基づく許可が必要です。民泊新法の場合、年間180日以内の営業制限がありますが、届出が比較的簡易で、住宅専用地域でも運営可能です。旅館業法の許可を取得すれば、年間を通じて営業できてより高い収益が見込めますが、消防設備や客室面積などの要件が厳しくなるのです。
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